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前田亜季さん(高梨美和役)

 もともと、父が『犯罪症候群』を見ていて、私が出演することをまだ知らない時点で、『すごくおもしろいドラマがあるんだよ』と話していたんです。そういう作品に参加させていただけて、嬉しく思っています。ただ、台本を読んで、どっしりと重いものを受け取りました。人の心を正面から描き、胸が苦しくなりましたが、土曜の夜11時40分から放送される作品だからこそ、ここまで踏み込めるのだと思いました。

 現場に入り、高梨家は何気ない幸せがあふれていることを感じられたので、その後の展開を思うと胸が痛かったです。撮影前、監督さんやプロデューサーさんと話をした際、施設育ちの美和は、幸せは簡単に手に入るものではないということが分かっていて、日々のありがたみをかみしめている女性だと思うとおっしゃったんです。演じていても、この言葉を胸に刻むようにしていました。

 私は美和のような厳しい環境で育ってきたわけでもなく、子供もいません。だから演じるにあたり、想像するしかありません。台本には書かれていませんでしたが、美和がどんな人生を歩んできたのかを考えましたし、そうすると彼女が置かれた地獄のような状況で何を思うのか、いろいろな感情が浮かんできました。それを現場で監督さんに話し、監督さんからもアドバイスをいただき、美和という女性を作っていきましたが、本当に苦しい作業でした。

 私自身、“復讐”というものから本当に遠いところにいる人間だと思っています。平穏無事に日々を過ごしているから、ピンとこないだけであって、もし美和のように極限状態に置かれ、『復讐したい!』と思ってしまったら…。理性で何とか踏みとどまりたいですけど、台本の中にも『復讐しても地獄、しなくても地獄』という言葉があり、確かにそうではないか、と感じました。今回は、もし私がギリギリの状況に追い込まれたとして、それでも正しい選択を出来るのだろうか? ということも考えました。私は日々をぼんやり過ごしがちなので、誰もが人生の中で、こんなにも過酷な事態に巻き込まれてしまうことがあるんだとハッとさせられ、“人生の選択”とは何か、考える良いきっかけをいただきました。

 『犯罪症候群』は確かに深刻な作品ではあります。一方で、ドラマとしてのおもしろさが至るところにあります。繊細にこだわったカメラワークや、セリフでなく役者の表情で伝えようとする演出など、きっと見ている方がいろいろなことを想像するはずです。そんなドラマの楽しみを最後まで味わっていただきたいです。